膝靭帯損傷(しつじんたいそんしょう)
- ■症状
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受傷後3週間くらいは膝の痛みがあり腫れ、曲げられる範囲が制限されます。急性期を過ぎると痛みや腫れ、可動域制限は軽くなりますが、損傷部位によっては膝に不安定感が残ります。
- ■原因と病態
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スポーツでの外傷や交通事故などで膝に大きな力が加わった時に、その力の方向応じて靭帯を損傷します。靭帯とは、骨同士を繋いで離れないようにしている筋状の結合組織のことです。それが傷つき、裂けたり破けたりしてしまうことで靭帯損傷が起こります。
主な原因として、野球やサッカーなどのスポーツに多く起因しています。まず一つには、人・物にぶつかった時に起こる接触型です。これはスポーツ中に膝に強い衝撃を受け、不自然な力が加わることにより引き起こされます。
次に、非接触型。これは急な方向転換や切り返しを行ったり、素早く体の向きを変えるなど捻りが加わることによって発生します。靭帯を損傷することによって起こる症状というのは、一貫して痛みを伴います。
少し傷ついただけなら一時的な痛みがある程度ですが、完全に靭帯が断裂してしまうと、その断裂時に激しい痛みを伴い、その後階段の上り下りなど関節を動かす時にも痛みを感じるようになります。また損傷の仕方によっては関節内に血が溜まり、腫れや曲げにくさを感じます。最悪では歩行が困難になることもあります。また膝には四本の靭帯があり、どの靭帯を損傷するかによって後々の影響の度合いが異なってきます。
- ■予防と治療
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膝靭帯損傷の治療法を決めるときは、まず損傷の種類を側副靭帯損傷と十字靭帯損傷に分けます。
側副靱帯損傷であった場合、損傷の程度によって弾性包帯・副子(スプリント)・ギプスのいずれかで固定し、そののちに可動域訓練と筋力訓練を行うという保存療法を用います。
十字靱帯損傷であった場合は、早期に手術的に修復しても受傷前と同程度の強度を持った靭帯に回復する事はほとんどありませんので、急性期は装具による固定と筋力訓練による保存療法を行います。これら急性期の治療が終了した後、膝崩れや歩行の不安定性など、日常生活を送る上で障害になるような症状がある場合は、靭帯再建術が行われます。
再建術を行う場合、靭帯は再生しない細胞なので、膝蓋腱や半腱様筋腱など他の器官を切除して靱帯の代わりとする(自家腱・自家靱帯)のが一般的です。また、他の人から靭帯を切除し、保管しておいたもの(同種靱帯)を使う場合もあります。人工靭帯を使う場合もありますが、再断裂のリスクが高い事もあり、単独ではほとんど行われず、自家靱帯・同種靱帯の補助に使う場合が多いです。
半月板損傷(はんげつばんそんしょう)
- ■症状
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膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかりを感じます。ひどい場合は膝に水が溜まったり、急に膝が動かなくなり、歩行困難になるほどの痛みを感じます。
- ■原因と病態
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一般的に、膝の半月板損傷とは、膝にある半月板の状態が悪化し、損傷することをいいます。
また、それらの症状が発生する原因は、外的な要因として膝を強打し、その衝撃によって骨などがずれてしまうことや、損傷するなどの要因があります。このため、事故のあった場合や自転車やバイクなどを運転する際に転倒した場合などに多く起こります。そのほかの原因として、年を取るにしたがって膝の半月板の変性が進みます。このため、少しの外傷であっても悪化しやすいことがあります。
このように、半月板損傷の原因は、その部位を強打した場合や年齢によるものなどがあります。このため、これらのことを防止するためには、原因などをよく理解し対策を行う必要があります。このため、これらの症状が現れた場合には、自分で判断せずに整形外科を受診して下さい。
- ■予防と治療
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半月板損傷の治療法は、手術を行わずに治療を行う保存的治療と、外科的療法である手術治療があります。半月板を損傷してから2週間程度の場合や、若い人の場合、損傷度合いが小さい場合などは保存的療法が取られ、2週間程度膝を固定して関節に負担をかけず安静に保ちます。痛みがある場合は湿布や塗薬、消炎鎮痛剤などの内服薬を使用します。
膝に大量の水がたまっている場合は、注射により水を取り除きます。関節の潤滑性を高め、炎症を鎮める効果のあるヒアルロン酸を関節内に注入することもあります。2週間程度の保存的治療で改善が見られない場合や、半月板が引っかかって関節がうまく動かない場合などは、手術治療を行います。手術治療には傷んだ部分を切り取って形を整える部分切除手術や、断裂部分を縫い合わせる縫合手術があります。
変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)
- ■症状
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初期では動作の開始時に膝が痛むくらいですが、中期になると正座や階段の昇降が困難になります。末期になると安静にしていても痛みがとれず、変形が目立ち、膝がきちんと伸びず歩行困難になります。
- ■原因と病態
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変形性膝関節症とは関節軟骨が損傷し、関節自体が変形してしまう病気です。ほとんどが加齢によるものですが、肥満や遺伝も関与しています。男性1に対して女性は4の割合で患者数が多く、高齢になればなるほど罹患者が増えます。
初期は歩き出しや立ち上がり時だけ痛みますが、症状が進むと正座が出来なくなったり、階段の昇降が辛くなりはじめます。更に寝ていても痛みが続き、明らかに膝が曲がってしまい伸ばせない状態になります。外傷や化膿性関節炎の感染後遺症もありますが、多くの場合加齢が原因です。関節の軟骨は年とともに弾力性を失い、使い減りしてしまうからです。
更に関節が炎症を起こすと水が溜まりはじめます。放置すると症状が進行していくこともあるので、整形外科の診察を受けてください。
- ■予防と治療
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変形性膝関節症の治療法には、大きく分けて保存療法と手術療法があります。保存療法にはいくつか種類があります。まず、リハビリテーションでは、膝の動きを改善するために、曲げ伸ばしを行います。また、筋力を付ける訓練も行います。他には、患部を暖めたり、冷やしたりして物理的な刺激を与える物理療法、サポーターや足底板、杖を用いて膝にかかる負担を軽減させ、関節を安定させる装具療法、ステロイド剤、ヒアルロン酸の注射や鎮痛剤の服用で炎症を抑える薬物療法などがあります。これらを上手く組み合わせて治療が施されます。
しかし、これだけでは期待通りの効果が得られない場合があります。その場合は、手術療法を選択します。内視鏡を入れて行うもの、骨の形を変えて内側にかかる負担を減らすもの、変形した関節を人工関節に置き換えるものが主なものです。このうち、内視鏡を使う手術は、経過が早く翌日から歩行することができることもあります。